少子高齢化、人口減少、空室問題など、現在の環境は不動産投資にとって大きな向かい風とも考えれます。
そしてこれら人口問題は、国として早急に対応すべき課題と言えるでしょう。
とは言え、東京都に関してはまだ深刻な人口問題に直面していると言えないようにも感じられていました。
しかし増加中の人口も2020年にピークを迎えると予測されています。
またエリア毎に見れば、すでに人口が減少している区もあるのです。
そして2035年以降の予測では、都内すべての地域が人口減少に転じると言われています。
こういった背景の中、今回は板橋区における不動産投資について考察していこうと思います。
板橋区の概要、特性
まずは板橋区の概要ですが、23区内で人口7位、人口密度9位、面積9位となります。(平成27年のデータ)。
ではまずはじめに、不動産投資におけるもっとも大きなリスクのひとつである空室リスクに関連する空き家率から見ていきましょう。
板橋区の空き家率は11.6%となっていて、東京平均(11.2%)よりも若干高い数値であることがわかります。
これは不動産投資を行なう上で、マイナス材料になるかもしません。
では安心して暮らせる街であるかどうかの基準である犯罪数を見ていきましょう。
板橋区のここ5年の件数は
平成23年:7532件
平成24年:6269件
平成25年:6029件
平成26年:6209件
平成27年:5763件
となっています。また平成15年の犯罪件数は1.2万件を超えていましたが、現在では半数以下になりました。
これは行政による防犯対策の効果が出ていると考えられます。また今後も防犯対策を継続することで犯罪件数が減少すれば、さらに治安の良い街になることが期待できます。
次に子育て世帯が住みやすい街であるかのひとつの指針になる待機児童について見ていきましょう。
東京は全国的に待機児童が多いことで有名ですが、板橋区の平成28年度の待機児童数は376人(前年比+2人)で23区内で3番目に多い数値となっています。
平成27年度の378人とほぼ同数ですが、平成25年度:417人、平成26年度:515人に比較すれば減少しています。
また0~1才児の割合が7割以上と高く、出産後に働き出す母親層には不利な状況となっています。
しかし板橋区では待機児童問題対策として保育園の新設、定員の増加といった対策に乗り出しているため、今後の動向には注目したいとろこです。
しかし現在の数値だけをみれば板橋区は子育てがしやすい街とは言えないでしょう。
次に板橋区の人口について考察していきましょう。
板橋区の人口推移
板橋区の人口動向について調査しました。日本人総数の直近5年と過去抜粋データが下記となります。※()は外国人登録者数。
2016年:530611人(20147人)
2015年:526150人(18022人)
2014年:523326人(16714人)
2013年:521141人(16234人)
2012年:518350人
2007年:511160人
2002年:502739人
2002年から2016年までに2.8万人程度増加していて、2002年と2016年比較すると1.05倍程度の人口が増加しているのが確認できます。
また戦後からの長いスパンで見ると、1990年までは人口は増加していましたが、それ以降1995年までの5年間は減少に転じていました。しかし2000年以降16年間は増加が続ています。
また生産年齢人口は1990年頃をピークに徐々に減少しています。
では今後の人口推移はどうでしょうか。下記は国立社会保障・人口問題研究所による2020年~2040年までの板橋区の人口将来推計となります。
2020年:538278人
2025年:531244人
2030年:520742人
2035年:507500人
2040年:492036人
2020年時点では増加していますが、2025年には減少に転じ、2040年に至るまで減少が続くことが予想されています。
ただし減少の幅は非常に小さく、現状維持に近い数値で推移することが予想されています。また2020~2040年の20年間で4.6万人程度の人口減少で、2020年から8%程度の減少となります。
では板橋区はどういった人口問題への取り組みをおこなっているでしょうか?
板橋区では「地域産業の活性化・雇用創出」「子育て支援」「都市連携及び高齢化社会に適応した社会を作る」の3つの戦略を打ち出して人口問題に取り組んでいます。
また板橋区が算出する将来人口推移は国立社会保障・人口問題研究所のものよりも緩やかな人口減少スピードを想定しています。
これらのことを考慮すると、板橋区の人口は2040年まで多くな問題は抱えていないと判断できるのではないでしょうか。
そのため不動産投資に大きなマイナスの影響はないと考えられるでしょう。
板橋区の不動産価格
次に板橋区の不動産価格の動向について見ていきましょう。
まず板橋区の地価は、東京都内22位、全国23位となっています。最も高い坪単価は1989年の約468万円でしたが、2016年現在は1/3程度の143万円前後で推移しています。
では最近の地価の変動を見てみましょう。
2006年から2008年の3年間の地価は上昇しています。特に2007年(10%以上)、2008年(8%以上)とかなりバブル以降最大の上昇となりました。
その後、2009年から2013年の5年間は下落に転じ、2009年(9%以上)は大きく下落しました。
そして2014年から2016年の3年間は2%未満と小さい値動きですが、上昇に転じています。
なお板橋区の2016年の地価は前年比プラス0.13%とほぼ横ばいに近い上昇で、板橋区を22エリアに分割した地域別の2016年データでは、14/22と6割強のエリアで地価が上昇しています。
なお坪単価の最高値は下板橋エリアの約221万円(前年比約0.8%DOWN)、最安値は新高島平エリア(前年比約2.5%UP)の約98万円となります。その差は2.2倍程度と格差はあまり見られません。
2016年に板橋区で10%以上大きく上昇した地域は見当たらず、小竹向原エリアの4.7%が最高の上昇率になります。
また下降した地域は下板橋、ときわ台、板橋区役所前、中板橋、板橋本町、東武練馬、 成増、志村三丁目の8エリアとなります。
そして大きく下落したエリアはなく、板橋区役所前の2.9%が最も大きな下落率になります。
板橋区の平均地価は約143万円で、最高値と最安値の地域差が123万円程度の2.2倍となります。この数値を他の区と比較すると、価格差は少ない地域となります。
下板橋、板橋駅、大山エリアは区内でも地価の高いエリアとなりますが、お隣の豊島区池袋駅までのアクセスがよいという共通事項が見られます。
反対に埼玉県よりのエリアは比較的、地価の安いエリア多く見られます。
しかし板橋区は他の区と比較して地域格差が少ないため、敢えて地価の高いエリアに照準を絞り投資物件を探すのも面白いかもしれません。
また賃料相場は都内19位で地価の22位とほぼ同じクラスのため、高利回りを見込める割安感のある物件は少ないと言えるでしょう。
ちなみに板橋駅周辺であれば、池袋まで3分、新宿まで9分と通勤・通学に非常に利便性も高いため地域となっています。このような地域であれば賃貸需要がいきなり減少するようなことも考えづらいため安定した投資が期待できます。
また反対に埼玉よりのエリアに絞り、割安な物件を探すのも悪い方法ではないでしょう。埼玉よりと言っても都心までのアクセスに10~20分程度の違いしかないため、駅近にこだわり物件を探すのも面白いかもしれません。
また賃料相場は都内19位で地価の22位とほぼ同じクラスのため、高利回りを見込める割安感のある物件は少ないと言えるでしょう。
どちらのエリアにしろ板橋区を細分化したエリア分析・調査を行い、バランスの良い投資物件を探すことが課題となるでしょう。
板橋区の交通・アクセス
では板橋区の電車状況はどうなっているでしょうか?
まずはJRから。JR埼京線の利用が可能です。停車駅は下記となります。
・JR埼京線:板橋駅
次に地下鉄。地下鉄は東京メトロ有楽町線、副都心線、都営三田線の利用が可能です。
停車駅は下記となります。
・東京メトロ有楽町線、副都心線:地下鉄成増駅
・都営三田線:蓮根駅、新高島平駅、志村坂上駅、新板橋駅、志村三丁目駅、本蓮沼駅、板橋本町駅、板橋区役所前駅、西台駅、西高島平駅
そして私鉄は、東武東上線の利用が可能となります。
・東武東上線:ときわ台駅、東武練馬駅、上板橋駅、大山駅、成増駅、下赤塚駅、中板橋駅
複数路線が利用できる駅は、板橋駅のみとなります。
板橋区で行う不動産投資の将来性
これらのデータを元に板橋区は不動産投資エリアとしては適しているのか考察してみましょう。
まず人口から。
国立社会保障・人口問題研究所のデータによれば、2025年には人口が減少に転じることが予想されています。また2016年2040年を比較した場合、減少はしていますが4.6万人程度の8%程度の減少が予想されています。
しかし板橋区が独自に算出した将来人口推移では、2040年の人口は536,182人と算出され、2016年現在の53,0611人よりも多い数値が出されています。
板橋区では人口問題などに対する取り組みを行っているため、この予測数値通りになるかは今後の動向を見守る必要があるでしょう。
では交通に関してはどうでしょうか?
埼玉方面にアクセスの良い埼京線、東武東上線、また東京メトロと都営線の利用も可能なため非常に利便性が高い地域と言えます。
特に日本最大級のターミナル駅である池袋駅、新宿駅までのアクセスは板橋区内であればどこからでもアクセスが良いため、通勤・通学に非常に便利な地域です。
また複数路線が利用できる板橋駅のみですが、板橋駅からは池袋、新宿まで10分以内と抜群の利便性です。
地価に関しては、23区内で下から2番目に位置するのが板橋区です。
地域による地価の格差は小さく、下板橋、板橋駅、大山エリア周辺は板橋区内で地価が高いエリアになります。池袋寄りと埼玉寄りで地価に2倍程度の差がありますが、23区内ではこの数値は低い数値となります。
また平均賃料に関しても23区内で下から4番目のポジションになり、地価とほぼ同じランクとなるため、投資に見合ったリターンと言えるのではないでしょうか?
また板橋区の民泊ビジネスの状況を見ると、エアビーアンドビー登録数は23区内で下位層に位置し、稼働率も同様に低いエリアとなっています。そのため民泊ビジネスの活況エリアとは言えません。
しかし新宿や池袋は民泊ビジネスが盛んなエリアであるため、これらの地域にアクセスの良い板橋区は集客方法や物件の差別化によっては、民泊ビジネスで成功する可能性も否めないでしょう。
新宿や池袋と知名度で劣る板橋区をどのようにアピールするかが課題となりますが、これをクリアできれば費用対効果の高い投資を実現できるかもしれません。
板橋区について特性、人口、交通、地価について調査してきましたが、これらの情報を総合して判断すると、板橋区は投資エリアとして魅力のある地域と言えるのではないでしょうか?
※人口データは板橋区資料、国立社会保障・人口問題研究所、土地価格は土地代データ、不動産データはスマイティ参考に記事を作成しています。