
不動産投資のリスクとリターン
個人にとっての「投資・資産運用」とは、お金を増やす目的で自分の資産や資金を投下することである。
投資が怖いと感じる最大の理由は、その「不確実性」であり、
投下した資金や資産がどう“化けるか”わからない点にある。
ひとくちに資産運用といっても様々な方法があるが、不動産投資はというと、少し特殊な方法であるといえる。
自分の信用度を担保に不動産を購入し、そこに人を住まわせることで収益を上げていくモデルであり、株式や債券などと違い、「実物資産」を運用する方法である。
投資にリスクはつきものであるが、リスクとリターンの関係性において、不動産投資は株や債券などとは仕組みが全く違う分、比較が難しいといえるだろう。
では、不動産投資におけるリスクとリターンはどう考えればよいのか?
不動産投資で得られる収益とその特徴
不動産投資で得られる収益は主に2つある。
購入した物件を他人に貸し付けることで賃貸収入を得る「インカムゲイン」、購入した物件を他人に売ることで売却収益を得る「キャピタルゲイン」の2つだ。
例えば銀行から2000万円を借りて不動産を購入し、返済を20年3%固定金利だとすると、毎月の返済額はおよそ111000円となる。(元利均等返済・保証料などは含めず。)
この物件を仮に月額12万円で貸し付けたとすると、毎月9000円の利益が出ることになり、完済後は、家賃が丸々収益となる。
これが「インカムゲイン」であり、不動産投資の最大の魅力であるといえる。
さらにこの物件が購入時より値上がりした場合、物件そのものを売却することで「キャピタルゲイン」を受け取ることができる。
実際、1986年~1991年に起きたバブル景気では、不動産を含む資産価格が軒並み上昇し、東京都の山手線内側の土地価格でアメリカ全土が買えるほど高騰した。
会社員でも購入できる時代になった
不動産投資は不動産を購入するが故、イニシャルコストがかかると思っている人も多い。
しかし、今では頭金がほとんど必要なくても借り入れできるようになった。
中にはフルローンで借り入れすることができるなど、株式投資などと同じ金銭感覚で始めることができ、
会社員やOLでも始める人が増えた。
また不動産投資は「実物資産」の運用になるため、株式などとは違い様々な管理業務がある。
こういった管理業務を代行する業者が増えたことも不動産投資の増加に一役買っているといえるだろう。
不動産投資におけるリスク
不動産投資のリターンが「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」であるとすると、リスクはその逆である。
つまり「思った通りの家賃収入が得られない」か「物件価格が購入時よりも値下がりした」場合である。
先ほどのバブル景気を例にとると、首都圏新築マンションの平均坪単価は1980年前半から後半にかけ約2倍上がり、91年には350万円を突破。
ここが事実上のバブルのピークとなるが、その後92年以降は急落、98年には200万円を切るレベルに至った。
350万円で買った人にとっては地獄を見る展開であり、不動産投資のリスクはここにある。家賃収入においては、賃料相場の下落や空室リスクが想定される。
不動産投資は「自分以外の誰かが住む」ことで初めて収益が発生するため、空室は極力避けなければならない。
その他、不動産投資のリスクとして考えられるのが、地震などによる建物の損壊リスク、家賃滞納による滞納リスク、またリスクとは言えないかもしれないが、定期的な修繕などが挙げられる。
地震や火災による損壊は地震保険や火災保険である程度カバーできるが、修繕などの維持費は自分で用意しておく必要がある。
代行業者の中には、これらのリスクに対処するプランを設けているところもあるため、確認してみるとよいかもしれない。
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターン
前述のリスクとリターンを勘案し、さらに預貯金、株式投資と比較すると、不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンといえる。
株式と一口にいっても、様々な企業があるため一括りにはできないが、投資金額が何十倍にもなる可能性がある一方、出資会社が倒産したらゼロになるという意味でハイリスク・ハイリターンとして考えている。
その点、不動産投資は賃料下落などにより収入が思ったよりも少なくなる可能性は十分あるが、
実物資産のため倒壊しない以外で価値がゼロになる可能性は極めて低いと考えられる。
そういった点を考慮に入れて、ポートフォリオを考えていくとよいかもしれない。